No.標

2/21
前へ
/25ページ
次へ
意図的に暗く創られただだっ広い巨大なロビーのような広間に、それぞれコートや何かで身を包んで集まっている。 痛い程の静寂が部屋を包んでいる中で広間から少し離れた場所にある扉がギィ…、と音を発てて開かれた。 「―――帰ったか。レイ」 「レイ」と呼ばれた青年は漆黒に魅せるコートに身を包み深々と被っていたフードを脱ぎながら、広間に歩いて来る。何も語らずいつも決まっている立ち位置へと着く。 すると何処からともなく現れたきらびやかというわけではないが、少し濃い銀の頭をした人物が歩み寄って来たのだ。 「ああ、帰ったんだね!レイ…」 「……ああ」 いつもなら見向きもしないのだがたまに相手をしなければ何を仕出かすか分かったものではないので、4日振りに口を聞いた。 返事が返ってきたことに気を良くしたのか更に距離を縮めて歩み寄って来る。その行動に少し嫌気が差しながらも、敢えて触れない。 「レイは今日はもう休むのかい?ああ!そうだ、たまには綺麗な夜景の見える所で食事をしないかい?」 喋り出したら止まることを知らない。きっとレイが前から消えても暫くは気付かず、一人で喋って居るだろう。 食事に行けば言葉通り誘ってきた彼が間違いなく、ご馳走してくれることは目に見えているが…生憎、今日は食事をする気分ではない。 「…俺に構うなって言った筈だ―――ジル」
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加