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ガチャ、とユリスが扉を開けると、可憐な少女(?)が部屋の椅子にゆったりと座っていた。
フェラルシア公爵夫人、アステリアである。
髪は紺色でユリスと同じように腰まで届いている。紅い瞳に優しさがにじんでいた。
「母上~~」
ユリスは思わずトテトテと母親まで走り寄り、抱きついた。母親のぬくもりが大好きなのだ。
アステリアは微笑みユリスの頭を撫でた。
「ん……」
ユリスは気持ちよさそうに目を細める。
ほほえましい光景である。
しばらく撫でてもらったあと、ユリスは訊いた。
「母上、わらわにどんな用なのじゃ?」
アステリアはユリスの言動が大人びていることに最初はびっくりしていたが、今はもうすっかり慣れている。
「ちょうど3時だから、おやつを一緒に作ろうと思ってね。この前のチーズケーキ? だったかな。おいしかったから、またつくろうと思ったのよ」
前世悠斗であったときはパティシエであったため、洋菓子を作る技術を身につけていた。この世界に転生してからも、それと似たようなものがあり、作れるかどうか試してみたかったため、こっそりと夜中に厨房に忍び込んで作っていたのだった。
アステリアは廊下を歩いている途中、厨房に明かりがついているのを見つけ、入ってみたところ、ユリスが何かを作っている最中だった。
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