3765人が本棚に入れています
本棚に追加
アステリアはユリスの作っているのが出来上がるまで見守っていた。
(何を作るのかしら。何か食べたことがあるような気がするけど)
ほどなくして作り終わったところで、アステリアは厨房に入り、話しかけた。
「ユリス、何を作っていたの?」
ユリスはいきなりの言葉に肩をビクッとし、母親の方へ首を向けた。
「母上……見とったの……か?」
かなりびっくりしたようだった。
「ええ。途中から。何を作っていたの? なにか見たことがあるようだけど」
「これはな、チーズケーキというものじゃ」
聞いたことのない単語にアステリアは目を丸くした。
「チーズケーキ?」
「うむ。本を見ていたらそのことが書いてあってからの。作ってみようかと思ったのじゃ」
(本で見たから、としても、かなりおいしそうだわ)
アステリアがそんなことを思っていると、ユリスは首を傾けて「食べたいのか?」と訊いてきたのだ。
「食べたそうな顔をしておったからのぉ」
「……食べてみたいわ」
アステリアがそういうと、数個あるチーズケーキのうち1個を差し出した。
小さなフォークを持ってきて、アステリアははむっと口の中に入れる。すると、ほのかなチーズの甘みが口の中でとろけるのを感じた。
「おいしいわ。このことは内緒にしておくから私にも教えて?」
ユリスは困った顔になったが、「まあよいじゃろう」と言った。それはおとといのことだった。
(どうしてなのじゃ?わらわが内緒にしてほしいと言ったつもりだが……)
ユリスがそう思っていると、アステリアが申し訳なさそうな顔になった。
「ごめんね、そのあとにばったりとギルスに会ってしまってね、口にチーズケーキのかすがついていたらしくて、問い詰められて話してしまったの」
ユリスはため息をついた。
最初のコメントを投稿しよう!