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「見たことがないものだが、美味いな」
長テーブルの先端で銀髪の少年(?)がガトーショコラを口にした途端に顔を綻ばせながら言った。 フェラルシア公爵、ギルスである。長く透き通るような銀髪を一つに束ねている。ギルスは紅い瞳を妻に向けながら聞いた。
「アステリア、これお前が作ったのか?」
「いいえ」
そう言うと、横に座っているユリスの頭を撫でながら顔をユリス、そして夫に向けた。
「ユリスが作ったのよ」
ギルスは驚愕した表情になる。「それ、本当か?」
ユリスはこくりと頷いた。
「どうやって作り方がわかったんだ?」
(絶対にこうなると予想していたのじゃ……)
内心ため息をつき、
「本で書いてあったのじゃ」
前母に言ったのと同じことを言う。
「そうか……また作ってくれよな」(詮索されないでよかったのぉ……)
ユリスはホッとする。
「本当においしいよ。ユリス、自分のは食べないのかい?」
ローラスが言った。
兄のしたいことをすぐさま察知したユリスは皿を手で押さえ、反論した。
「わらわは自分で食べる。あーんは嫌じゃ」
ローラスはがっかりし、ぶつぶつと呟いた。アステリアとギルスは顔を見合わせて微笑みあった。 扉の近くで佇んでいるエリシア達メイドはそんな家族の光景を微笑んだ。
(兄弟でしか見えませんね)
見た目はその様にしか見えないがれっきとした親子である。
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