スタート

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(いかにして兄上を出し抜くのか…………)  ユリスは後ろを見る。さっきから距離は変わっていなく、笑顔で追いかけている。  せっかくのイケメンがにやけ顔で台無しになっていた。  背筋がぞわっとし、冷や汗が背中を伝った。  ユリスの走る先には屋敷の出口が見えていた。そしてふと、考えが浮かんだ。ユリスの口元に笑みをこぼす。 (これじゃ)  ユリスは外に出ると、すぐに出口の陰に隠れ、魔法で出口の真下に氷を張った。氷があると気付かれてはいけないので透明にする。 「ユリス~~、ハグさせて~~――うぉ!?」  ローラスが出口を通り過ぎたとき、ユリスが張った氷に滑って思いっきりこけた。  打ちどころが悪かったらしく、かなり痛がっていた。 「大丈夫かのぉ、兄上?」  ユリスは極上の笑みを浮かべながら兄に近づく。  痛さで涙目になりながら、ローラスはユリスを見た。  ユリスの極上の笑みにびくっとなりながらも、にやける。 「ああ、大丈夫さ。ハグしてくれたら追いかけるのを諦めてやるよ」  その言葉にユリスは極上の笑みをさらに上げ、右手に魔力を集める。 「来たれ 冷気の風 彼を凍らせ『凍てつく氷風』」  手に冷気が纏い始め、兄に向けて当てる。 「これだけはやめ――」  ローラスは最後まで言えなかった。  カキーン、と、ローラスは氷漬けになり、ユリスはそんな兄の姿をはははと笑う。  ユリスはつくづく兄に対してドSになっていくことに気付いていた。 「しばらく反省しておれ、兄上。数時間で溶ける」  手を伸ばして助けを呼ぶような状態で凍っている兄に背を向け、自分の部屋へと戻る。
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