3765人が本棚に入れています
本棚に追加
/465ページ
(いかにして兄上を出し抜くのか…………)
ユリスは後ろを見る。さっきから距離は変わっていなく、笑顔で追いかけている。
せっかくのイケメンがにやけ顔で台無しになっていた。
背筋がぞわっとし、冷や汗が背中を伝った。
ユリスの走る先には屋敷の出口が見えていた。そしてふと、考えが浮かんだ。ユリスの口元に笑みをこぼす。
(これじゃ)
ユリスは外に出ると、すぐに出口の陰に隠れ、魔法で出口の真下に氷を張った。氷があると気付かれてはいけないので透明にする。
「ユリス~~、ハグさせて~~――うぉ!?」
ローラスが出口を通り過ぎたとき、ユリスが張った氷に滑って思いっきりこけた。
打ちどころが悪かったらしく、かなり痛がっていた。
「大丈夫かのぉ、兄上?」
ユリスは極上の笑みを浮かべながら兄に近づく。
痛さで涙目になりながら、ローラスはユリスを見た。
ユリスの極上の笑みにびくっとなりながらも、にやける。
「ああ、大丈夫さ。ハグしてくれたら追いかけるのを諦めてやるよ」
その言葉にユリスは極上の笑みをさらに上げ、右手に魔力を集める。
「来たれ 冷気の風 彼を凍らせ『凍てつく氷風』」
手に冷気が纏い始め、兄に向けて当てる。
「これだけはやめ――」
ローラスは最後まで言えなかった。
カキーン、と、ローラスは氷漬けになり、ユリスはそんな兄の姿をはははと笑う。
ユリスはつくづく兄に対してドSになっていくことに気付いていた。
「しばらく反省しておれ、兄上。数時間で溶ける」
手を伸ばして助けを呼ぶような状態で凍っている兄に背を向け、自分の部屋へと戻る。
最初のコメントを投稿しよう!