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「悠斗。
競争。あの赤いポストまで。」
わたしはとにかく大丈夫だよ、心配するな、と伝わるように説明したあと、間髪入れずに悠斗に提案した。
電信柱に寄り添うまるで夫婦のように長い間隣り合っているポスト。
おばあちゃんに頼まれてよく手紙を入れていた。
あの口の中に「あ~ん」とか言って手紙を食べさせたいばっかりにおばあちゃんに「お手紙書いて!」ってせがんでいたっけ。
左横を向くと男の子にしてはやや大きめの瞳がわたしを見つめていた。
「紗和。」
いつになく落ち着いた声にドキっとしたことを隠すようにすぐに前に向き直ってしまった。
「赤じゃないポストもあるの?」
・・・・。
悠斗、そこ?
今そこ気になりどころだった?
「くだらん。
位置についてー・・」
くだらないと一蹴するものの、でもくだらなすぎて本当に・・・
あ~わたしの友達なんだなって実感。
この空気に笑いそうなのを堪え、わたしはまた両手の指と左膝を地面につく。
「ちょっ・・紗っ・・」
悠斗が何か言いかけたが、それにわざと被せるように「よーい」と続ける。
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