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「痛い」
ふてくされたように放ったわたしの言葉に桜が笑う。
「紗和はいつも生傷が絶えないね」
桜はわたしの前の席に横向きに座り、わたしの机に肘をつき自分で「アピールポイントなの」と豪語する得意の上目遣いでわたしを見ながら言った。
「元気で好奇心旺盛な息子を持つ母親の気分」
ふふっと笑いながらわたしの額にある5センチメートル四方くらいのガーゼに手をのばす。
「それにしても自転車のハンドルがジャストミートって・・・っ」桜は笑ってはいけないと思ったのか途中で話を止め、吹き出しそうな笑いを堪えるように両手で自分の口を塞いだ。
ぶうっと頬を膨らましながら、わたしは額にある白くテープで固定されたそれにそっと触れた。
数時間前にはこんなのなかったんだけどな。ぼんやりと頭の中で呟く。
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