ネルソン

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ある時、日本語を少し話せるようになったネルソンが私に聞いた。 「コンゴの先生たちは、子どもが悪いことをしたら叩く。どうして、日本の先生は叩かない?」 私は、今まで誰かにそんなことを聞かれたことがなかった。 むしろ、その頃は学校が激しく叩かれていて、子どもを叩く教師はそれこそ激しく叩かれていた。 その日本の現状を話したところで、本当の理由とは言えないだろう。 少し考えた結果、「先生が子どもを叩くと叩かれた子どもは他の人を叩くかもしれません。叩くことは、憎しみを生みます。なので叩くことはしません。それに、あなたは叩かなくても分かる子です。」と説明した。 ネルソンにはずば抜けた理解力があった。 いつも、言葉の違いがあるにもかかわらず相手の話を理解して、言葉の裏にある真実の意味すら理解していた。 この時も、少しのやり取りで「ここは日本であり、コンゴとはやり方が違うのだ」というところまで理解していたようだった。
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