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砂時計を何回ひっくり返しても、母が帰ってこない日がありました。
夜になって、怖くて一人で泣いていた3月の初め。
父が血相を変えて帰ってきました。
『凜、病院行くぞ』
父は母の着替えをバックに詰めて、私の手をとり、車へと誘いました。
何年ぶりかに父に触れたのと、名前を呼ばれたことが少し嬉しく思っていました。
父には暴力は受けていませんでしたから、特に警戒心はなかったんだと思います。
薄暗い道を走って、病院に着くまで、父が言ったのは『凜に妹ができたぞ』の一言だけでした。
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