恐怖のはじまり

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新生児室らしきガラス張りの部屋を目の前にした私に、母性本能らしきものが芽生えました。 『凜、この一番端っこにいるのが、お前の妹だ。しっかり面倒見てやれよ。』 ニヤニヤした私は父の顔も見ずに、何度も頷きました。 可愛い寝顔、時々チュウチュウとタオルを吸う仕草。 シワシワの手をギユッとして、何かの夢を見てるかの様に瞼がちらついていました。 父に手を取られ、新生児室を後ろ髪を引かれる思いで後にしました。 『お母さん、疲れてるから、おりこうさんにしないとダメだぞ』 どうやら母が別の部屋にいるようで、これからそこに行くようです。 私は…怖くて怖くて、行きたくありませんでした。 砂時計を家に置いてきてしまったからです。
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