独り者

恐怖のはじまり

とにかく、母が退院してこないと話が進まないようでした。

おばさんは、私の世話をするために、会社に連絡して有給休暇を全部使いました。
『ちょうど…年度末までに消化しないといけないから、大丈夫よ。』
父がそう言われたことを、のちに話してくれました。

それに安心しきって、母が退院してきてからも、父は帰ってこない日がよくありました。

私が成人するころ、その理由が明らかになりました。
父には、もうひとつ、影の家族がいたからでした。