生誕

2/5
前へ
/36ページ
次へ
私が生まれたのは、東日本大震災で壊滅的被害を受けた、岩手県の南の端っこ。 少ししかない思い出も、すべて津波によって流されました。 この震災で明らかになった私のドス黒い過去をお話します。 1977年6月。 遠野家の初孫として、私、凜は生まれました。 予定日より1週間早い早朝でした。 男子に恵まれなかった遠野家は母を筆頭とした四姉妹。 古いしきたりが飛び交う田舎ですから、母、晶子が遠野家を継ぎました。 父の孝輔は三男でしたから、婿養子となりました。 生まれたばかりの私を囲む写真。 ひいおばあちゃん、おばあちゃん、おじいちゃん、母、父、次女の美紀子おばさん、三女のこず恵おばさん、四女の弘子おばさんの9人家族の写真。 今では海の底に沈んでいるでしょう。 次女の美紀子おばさんは成人していましたが、三女のこず恵おばさんと四女の弘子おばさんは、まだ高校生と中学生でした。 父、母、ともに当時23歳。 若い夫婦にとって、私が生まれたことは、本当に嬉しかったのでしょうか…?
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加