前世

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それから季節は秋となり、私達は座りながら紅葉を見ていた。 「紅葉が綺麗に燃えてる。」 「はい。」 「そなたと見に来れてよかった。」 夕日と紅葉の赤みが心に染みる。 「…もうじき帰らねば…。」 「…そうですね。」 そうして立とうとした時 「あっ…。」 足を滑らせてしまった。 「!」 男が私を支えたと同時に目が合った。 「巫女殿…。」 勢いよく抱かれた。 「巫女殿…。我と一緒にならないか?その…我と…。」 「…良いのですか?…こんな私で本当に良いのですか?」 「そなたがいい。」 そうして私達は暫くの間、唇を交わし合った。 「明日、あの桜の木の下で待っていてくれ。」 その夜… 「元就様!誠でございますか?あの巫女と…「あぁ。」 「そんな!!貴方様には許婚がいらっしゃるではありませぬか!…さては、あの巫女にそそのかれましたか?」 「その言い方はやめろ!」 「…お父上は黙ってはおりませんよ、きっと!」 朝になり私はあの桜の木の下へ走った。 〈フフ。また早く着いてしまったか。〉 そうして貰った紅をつけようとした時 「巫女殿…。」 左目に眼帯をした男がたっていた。 「そなたは元就様の…。」 ザシュっ 「!」 右肩が裂けた。思いもよらぬ衝撃で体が倒れた。 「こんな事はしたくない…。しかしこれも元就様の為!!」 振りかざされる刀を避けると私は立ち上がり桜の木の下へもたれた。次の瞬間 ヒュン 私の左胸に弓矢が突き刺さった。恐らくこの時、私は死んだのだろう。 「…すまない。成仏されよ。」 家臣は去って行った。 そのすれ違いにガタガタと牛車の音。 「元就ももうじき結納か。」 「すまないな元親。迷惑を掛ける。」 「いいって事よ。…しっかしここはなんか血生臭ぇな。…あれ何だよ。」 「!…あ…れはっ。」 男は牛車から飛び降り桜の木の下へと勢いよく走った。 男は肩で息をしながら私の屍を眺め、そして顔に触れた。 その瞬間、男の呼吸は荒くなり胸を抑えそして倒れた。 「元就!!」 「…あ…れを…。」 ハァハァと苦しそうに指を差すその先は 「あの巫女さん…まさかっ!待ってろ元就。すぐに巫女さんを。」 元親という男は私の胸から矢を抜きとり私を抱き抱え振り向き 「…元就。これでもう…。!」 そう言うと元親は足元から崩れた。 男はまるで眠ってるかの様にそのまま息を引き取っていた。
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