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前世
ー時は天皇に代わり藤原氏が政治を握る時代ー
私はある神社に仕える巫女であった。神に仕える身でありながらある男に想いを寄せていた。
その男は高貴な身分でありながら体が弱く政治には手をつけず、私が仕える神社によく訪れていた。
男は神社に咲く桜を好んでいて毎年春になると訪れる。
「ここの桜はお好きですか?」
「!。これは巫女殿!そうか…ここの神社の。」
「はい。ここは秋になると紅葉も綺麗なんですよ。」
「そうか。それでは楽しみが増えたな。」
「フフ。」
そうして他愛ない会話を延々続けていた。すると
「!ゴホゴホ。」
男の体が崩れていった。
「!どうなされました?」
「ゴホゴホ!…いやっ。…大丈夫…ゴホ。」
「顔色が悪いですよ。神社でお休みになられてください。今お水を…。」
「…ご迷惑を…。」
ハァハァと苦しそうに胸を抑える。
「胸を患っておいでですか?」
「…はい。幼少時代から…。…すまない。」
「いえ。少しは落ち着きましたか?」
「はい…。」
そうして日が暮れると男は家臣たちに連れられ帰って行った。それから数日後
「巫女殿。先日はご迷惑をおかけした…。」
「迷惑などとは思っておりませぬ。」
「そうか…。しかしお礼を言わせて欲しい。」
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