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碧い闇を浮遊した。
身を裂くような水の冷たさにはもう慣れ果て、ただ、漂う。
一体何を信じれば良いのだろう。
水面から差し込む、白い光を求めて藻掻いたけれど、行き場の無い両手が泡をつくるだけ。私が何者なのかも思い出せない。
躊躇いながら見上げた空に、映っていた白い光は私によく似ていた。あれは私なのだろうか。私を映した偽物なのだろうか。それとも私の方が、水面に映された偽物なのだろうか。
…いや。
最早偽りでも何でも構わない。私は空に在る私を愛す。そうすれば彼女も、海に在る私を愛してくれるはずだから。
私は今宵も空へ手を伸ばす。
何も掴めず、無力な両手が泡をつくるだけだとしても。
―碧・完
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