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黒板に次々と書かれていく白い文字を目で追いながら、雪路は尖らせた唇の上にシャーペンを乗せ、頬杖をつく。
ちら、と横目で隣にいる美鶴を見遣る。
その視線は真っ直ぐ黒板を見据えていて。
時折、板書された文字をノートに書く為、視線を下げる。
(…真剣だなぁ)
誠心誠意、土下座しながら告白し、付き合う事が出来たのは良かった。
キスしたり抱き着いたりとアプローチするのはいつも自分から。
穏やかなその性格から彼の立ち位置は受けだと思っていたが、まさかの攻め。
(いや、まあかっこいいんだけどさ…)
雪路は唇の上に乗せていたシャーペンを取り、机に伏せた。
美鶴の朗らかな笑顔で言葉巧みに翻弄され、焦らされるのはいつだって自分一人。
(面白くない)
自分だけ、いつも必死になっている気がする。
いつもいつも、必死になって、大好きなのは自分だけ。
(…そうだ)
いい事思い付いた。
そう思って、ガバ、と起き上がると横から視線を感じ、見ると何だか焦った様な美鶴と目が合う。
前、前、と美鶴が指差す方向に目を向けて、雪路は顔を引き攣らせた。
「俺の授業はそんっっなにつまんねぇか? あ?」
そこには額に青筋を立て微笑む類が立っていて。
「げ、ち、違います! いや、違わなくはないけど…じゃなくて! あのですね!」
「問答無用!!」
容赦ない鉄拳を頭に食らった雪路は頭を抱える。
尋常じゃない痛みに襲われながらも先程思い付いた作戦を実行しようと決意するのだった。
にしても超痛ぇえぇえぇ!!!
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