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少し話があるから来て、と美鶴を部屋に呼び、自室に入れると雪路はベッドに座る。
それを見て、美鶴も自然な動作で雪路の隣に座った。
「話って何?」
「あ、あの…さ」
先程思い付いた作戦を実行しようと雪路は美鶴から目を離す。
「俺……す、好きな人が出来た、んだ」
雪路のその言葉を聞いた瞬間、隣から息を飲む音が聞こえて。
先程まで何でもなかった部屋の空気が急に張り詰めた物になったのを肌で感じ取った。
普通だったら相手は誰、とか何で、とか聞いてくる筈。
それを期待して、雪路は自分の足元だけを見る。
重い、沈黙。
「………そっか」
呟かれたその言葉に雪路は固まる。
(そっか? そっか、て何、問い詰めないの? 好きな人出来たって言ってるのに?)
内心テンパりながら、横にいる美鶴を見ると酷く悲しそうに笑っていて。
「じゃあ、仕方ないね」
そう言って笑う美鶴の腕を雪路は慌てて掴んだ。
「ちょ…仕方ない、て…聞かないの? 相手は誰、とか何でそんな事になったの、とか」
「だって…雪路はその人が好きなんでしょう?」
掴んだ細い腕から伝わる細かい震動。
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