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「スピードを出すから、ちゃんと掴まっているんだよ」
「はい」
そう言われて私はアレックスの胸元をギュッと握りしめた。
それを合図に、アレックスは馬を走らせ始めた。
しばらくして…
「きゃっ!」
初めて乗る馬にマリアンヌは体制を崩しアレックスにしがみ付いた。
それに気が付いたのか、アレックスが素早くマリアンヌの体制を元に戻すと話しかけてきた。
「大丈夫か?」
「な、なんとか…」
激しく揺れる馬に振り落とされない様にするのに必死で、王太子と共にいることを忘れていた。
やっぱり馬は早くて、あっという間に町に戻ってきた。
「あの、ここでいいです」
森の入口までやって来た所でマリアンヌは降ろしてくれるように頼んだ。
「だが、家まで送ると…」
「いいえ!お急ぎなんでしょう?私はここで十分です」
「わかった」
そう言うと、アレックスは馬の速度を落とした。
アレックスは馬が完全に止まると先に降りてマリアンヌの腰に手をやると、ひょいっと軽々と身体を持ち上げ地面へと降ろした。
決して軽くない自分を何の躊躇もなく持ち上げるなんて、きっと普段から鍛えているんだろう。
「ありがとうございます」
馬から降りたマリアンヌは陛下と騎士のキースに深々と頭を下げお礼を言って別れるとそのまま駆け出し家路へと急いだ。
(もう、会うこともないわね…王太子陛下と馬に乗るなんて貴重な体験だったわ)
そんな事を考えながら走っていたマリアンヌ。
まさかキースに話しかけられるまで、その後ろ姿をアレックスがじっと見つめていた事にも気づいていなかった……。
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