絶望な日々

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僕は目を疑うほどの周りの風景の変化に驚いた。 先程まで桜並木の道が全部緋色だけの世界に飲み込まれてしまったと錯覚するほどに目の前が緋色に包まれている。 更には体が無重力のような感覚でフワフワと浮いているようだ。力も入らず、ただ緋色の世界に浮いていた。 すると、何か小さな声が聞こえた。 耳を澄ませると、呪文のような声がした。自分の頭では理解が出来ずその言葉を無視して、目をゆっくりと閉じて、ただこの緋色の世界に身を委ねた。 そして、ゆっくりと瞼を開けると先程までの世界ではなく、桜並木の通りに戻っていた。 「何だったんだろう?今のは……」 周りを見渡すと、日常の中では当たり前の風景。だがあの緋色の世界は日常とは掛け離れた世界だった。 一つだけ気掛かりなことがある。 あの緋色の世界に覆われる前までの行動を改めて考えると、原因になる行動があった。 「もしかしたら……指輪が?」 と指に通した指輪を見ると、指輪が緋色の光を放った。
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