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総美国(そうみのくに)
総美国といえば、東側に古来より栄えた港をかかえる城下町神津(こうづ)と、西側に比較的新しく開かれた港をかかえる新津(あらつ)と、二つの巨大な港に象徴される海運国家である。
貿易により多大な富を得ている、強国の一つであった。
藩主八郷宗駿はまだ三十歳を迎えたばかりの野心家であり、よく近隣諸国に戦を仕掛け、小競り合いを繰り返しながら徐々に領土を拡げていた。
それを支えていたのは、近隣諸国に名を轟かせる三人の家臣。
一人目は内政と外交を一手に引き受ける、筆頭家老槇坂倖太夫(まきさかこうだゆう)。
『智の槇坂』と呼ばれる、温厚な人物である。
二人目は武神八幡太郎の生まれ変わりと称される戦上手、『鋼の神代』こと神代光也(じんだいあきや)。
口の悪さが災いして、若い時分に二度ほど主君八郷宗駿から謹慎を命じられそうになった前科がある。
それを取りなしたのが前述の槇坂倖太夫であり、それ以来頭が上がらない。
そのただでさえ上がらない頭が、倖太夫の娘美琴を貰った事で尚一層上がらなくなっていた。
三人目は、『疾風の斉賀』の異名を取る斉賀雷(さいがあづま)。
二つ名の通り、機動力にとんだ電撃戦を得意とする。
特に神代光也と連係すれば百戦百勝、八郷宗駿の自信の源泉となっている。
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