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歩道を挟んだ車道には、時々車が数台通る。
それ以外は人っ子1人もいない閑静な街。
聴こえるのはざあざあと降る雨音だけ。
寒気を感じて、あたしは子猫を抱き締めた。
ちょっと暖かい。まるで小さい子供みたい。
動物って羨ましいと思ったのはここだけの話。
「にゃんこさん‥寒くない?」
寒さで、自分の指の体温が解らなくてあたしは子猫に話し掛ける。
ちょっと休むつもりだったけど、体力も頭も限界みたいだった。
ぼーっとする。意識が朦朧として、子猫の姿が歪んで見える。
子猫は困ったようににゃあにゃあと鳴き続けるだけ。
困ったな、あたしが立ち上がらないとこの子はあたしの家まで行けないじゃない。
頭ではわかってるのに、体がもう動けなかった。
「拾ったのがあたしで…ごめんね、にゃんこさん‥」
頭を撫でてやろうと手を伸ばしたけど、その手はただ空を切っただけだった。
ぐらぐらして、ここが歩道だというにも関わらずあたしは倒れ込んだ。
子猫の鳴き声がより一層激しくなる。
「そんなに鳴かなくても大丈夫…ちゃんと、家に連れてってあげるから‥」
口先だけならいくらでも言える。あたしの体はもう動けない。
だけど子猫を安心させたくて何度もあたしは大丈夫、と呟いた。
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