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“ホントウの家族”よりも“家族”に近い存在で、恭ちゃんさえいてくれれば何もいらない、って位にあたしは恭ちゃんになついていた。
大好きで、大好きでずっと一緒にいられると思っていたのに。
勝手に留学を決めて、軽々と去っていったのが恨めしかった。
何これ、走馬灯?
走馬灯ってその人の人生の中で印象的な思い出を見させるものだったっけ?
だとしたら最悪。あたしの短い人生の中で恭ちゃんしか印象的な事なかったって事じゃない。
そう考えたら悔しくて、足や手に力を入れて起き上がろうとしてみたけどやっぱり無理だった。
「勢いつけたら……起きれるかと思ったけど‥ダメかぁ…」
力んだ事で視界が霞む。
なけなしの体力を使いきっちゃったんだ。
ごめんね、にゃんこさん。
ちゃんとしたおうちでご飯食べたかったよね。
せめて暖かい場所に連れてってあげたかったけど、それも無理みたい。
横たわったままでいると、1台の車が目の前で停まった。
赤い、カッコいい車。
車種なんてわかんない。このどんよりした雨に反してド派手な赤い車が、あたしの真ん前に停まっていた。
「大丈夫ですかっ?――――って…お前、夏奈か?」
慌てて車から飛び出して来たのは、あたしが今さっきまで思い返していた人物だった。
でも、知ってる人に会えた事で、あたしの張っていた緊張の糸はぷつりと切れてしまって、あたしの意識はそこまでしか保てなかった。
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