思い出のオレンジ・エード

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雨の日は大嫌い。低気圧の影響だと思うけど、雨が降ると体が妙にだるくなって、しかも微熱が出るから。さらに頭も痛くなる。 そんな日は決まって保健室で1日過ごすか、早退するかのどちらかに限る。 今日は後者だったけど。 「……」 保健室のベットに腰掛けて、あたしは携帯についたストラップをくるくると回した。 赤いハイビスカスがついたストラップ。 アクセサリーがちょっと多めについてるから、普通の物より少し長いストラップになってる。 いつも手持ちぶさたになると、こうして軽く振り回して遊んでしまうのがもう癖になってた。 つまり、今暇だというワケ。 「蓮見さーん?開けるわよ」 ベットの周りを覆っていたカーテンを開けて、保健室の先生が顔を出した。 この先生は、いつもそう。 あたしが返事をする前にカーテンを開けて、中に入ってくる。 「ご家族に連絡出来た?さっき職員室からもおうちにお電話したんだけど‥誰も出なかったから、留守電をいれておいたわ」 先生の言葉に、あたしは連絡なんてするわけないでしょ、と呟くのを堪えた。 ああ、やっぱり雨の日にいいことなんて何も起きない。
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