思い出のオレンジ・エード

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少しぼーっとする頭を抑えて、昇降口まで来ると大量の雨が降っていた。 雲間に光はまったく見えず、この分だとまだまだ降り続ける天気模様だ。 「傘‥持って来てなかった」 朝は、曇っていただけで雨が降る様子もなかったし、降ったとしても、どうせすぐに止むだろうと思っていたから傘なんて必要ない、と決めつけた今朝の自分を恨みたくなる。 小さく溜め息を漏らすと、あたしはカバンを頭に乗せて一気に校門まで駆け抜けた。 ばしゃばしゃと足元を跳ねる水が、靴下や靴を濡らしていく事が鬱陶しい事この上ない。 少し苛立って走りながら、あたしは雨宿り出来そうな場所を探す。 湿気で吐き気がする。頭の痛みが学校にいた時よりも増してる気がしてきた。 でも辺りには何もないから、立ち止まるワケにはいかない。 無我夢中で走っていると土手が見えてきた。 小さいけど橋もあるから、その下に人が座れるスペースはありそう。 ちょっと休む分には問題はないみたい。 あたしは、とりあえずそこで休む事にした。 橋の下には、数日前まで人がいたような跡が残ってた。 段ボールが無造作に置かれてて、この雨のせいかは解らないけどぐっしょりと濡れた毛布。
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