思い出のオレンジ・エード

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そんなの聞いて寝ていられる程、あたしは非情じゃない。 もそもそと起き上がって、川の傍まで来ると丁度上流の方から、鳴き声の主が箱詰めの段ボールから流れてくる所だった。 どうせ靴下も靴もずぶ濡れだし、まぁいっか。 あたしは流れる段ボールを止めるべく、そのまま川に入った。 箱詰めされて、苦しいだろうに。 箱の中からまだにゃあにゃあと鳴き続ける声が聴こえる。 上の方を開けてやると、猫の鳴き声が止んだ。 薄いタオルにくるまれていて、それを解いてやると真っ白な子猫が姿を見せた。 こいつ、助けられるの待ってたのかしら? だとしたら凄い根性だ、尊敬に値するよ。 あたしが頭をゆっくりと撫でてやると、またにゃあにゃあ、と鳴き始める。 「キミのご主人様は川に流すなんてヒドイ事をするね‥」 頭を撫でながらあたしが呟くと子猫はあたしの手に擦り寄ってきた。 あたしの手、冷たかったのかな? 「あ」 そういえばカバンの中に牛乳入ったままだ。 あたしの朝ごはんはいつもコンビニのパンと牛乳。 それを学校で食べるのが日課だったけど、今日は学校に着いた時点で食欲がなくて結局何も食べてないんだった。
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