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片手にカバン、片手に子猫。
全身が濡れるのに慣れた所でやっと見慣れた住宅街に入った。
あたしは走るのを止めて、肩で呼吸を整えながら歩く。
家に向かうには上り坂を登らないといけない。
この上り坂は並木道になっていて、春には桜が満開。桜のカーペットみたいになってて綺麗な道になる。あたしのお気に入りの通学路。
まさに元気な時に散歩するには打ってつけのルートだったりする。
今日はそんな事を考えてる場合じゃない。
体力がない状態で、上り坂を走る元気なんてとっくになくなった。
「にゃんこさん、ちょっとだけ休憩してもいい?あそこの屋根下で10分だけ休んだらまた走るから」
子猫はにゃあと返事するだけ。
しようがしなかろうが休憩するつもりだったから返答があった事に少しだけ嬉しくなった。
屋根下に入って、あたしはカバンからハンカチを出すと頭を拭いた。
それと同時に携帯を取り出して時間を確認した。
学校を出てから1時間以上たってる。
「先生に連絡した方がいいかな‥もうすぐ着くし」
「にゃあー…」
あたしの言葉に対しての返事なのか、ただ鳴いただけかは解らないけど子猫が鳴いた事が妙に笑えた。
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