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もう1度ため息をついて、ゆっくりと身体を起こした。
今日はみんなで映画を観に行くんだっけ。
下手に余裕ぶって2度寝すると、遅刻する可能性がある。
ならこのまま起きてしまった方がいいだろう。
欠伸をかみ殺しながら、机の上に視線を向ける。
「……おはよう、りー君」
そこにある写真に挨拶をしてから、思わず苦笑してしまう。
「って、もうわざわざ挨拶する意味はないわよね」
だけど身体に染み込んだ習慣は、なかなか抜けないだろう。
10年間欠かさず続けていた事なら、尚更だ。
「あっ、そう言えば……」
とそこで私は、思わず辺りを見回す。
……彼女の姿は、部屋の中にない。
それを確認して、口から安堵の息が漏れ出る。
まあ、さすがにこんな時間に来たりはしないか。
肩をすくめながら、昨日の璃緒の笑顔を思い返す。
「楽しみにしてて……ね、」
さっきとは別の意味で、苦笑が口元に浮かぶ。
璃緒は今日の事、本当に楽しみにしてるみたいだった。
まあ私も映画は嫌いじゃないし、思う存分楽しむとしよう。
適当に身支度を済ませて、リビングへと降りる。
すると椅子に座ってテレビを眺めていたお母さんが、私を見て笑みを浮かべて近付いて来た。
「おはよう。良い朝ねぇ~、毬奈?」
「お、おはよう……お母さん」
挨拶は返すけど、思わず身体を引いてしまう。
お母さんがこう言う笑い方をする時は、大抵ろくな事がない。
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