開始・潮湿

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――肌を刺すようなヒンヤリとした寒気で、私は眼を醒ました。 ここは…観布子市…いや、冬木…か? ボンヤリとした意識と視界。欠伸をしながら眼を擦り、再度辺りを見回す。 そこは野外。 しかも回りは草だらけ、自身が寝そべっていたのは黒みのある土の上…と言うか畑だ。大根の葉が列なっている。 「…ぁー、なんてトコで寝てんだ、私は」 気だるそうに立ち上がり、体に付いた土を払う。 そしてもう一度、自身が置かれた状況と、それ以前の記憶を思い返す。 まだ寝起きの頭がボーっとし、全然思い出す事が出来ない。 「……昨日、酒でも飲み過ぎたか」 適当な解釈で自己解決し、蒼崎は歩き出す。 とりあえず、寒い! 太陽は出ているのだが、それでも寒い。 吐く息が若干白く濁るところをみると、今は秋か冬なのだろうか? だが、一番の理由は、こんな気温下で半袖Tシャツを着ている自分のせいである。 「…風邪でも引きそうだな」 自身を皮肉りながらも蒼崎は、ここが観布子市でも冬木市でもなく、「自分の知らない土地」だと言う事は理解した。 それと、寒気とは別にもう一つ…肌にちくちくと突き刺さる感覚に、蒼崎の表情が少し険しくなる。 「なんだろう?この辺りを一体を覆い尽くす禍々しい感覚は…それに、なんだか――」 懐かしい――。 蒼崎は、この憎悪や悪意類いの微かな障気の中に、懐かしさを感じ取れた。…実に不愉快だ。 「……まさか、な」 そう呟き、ズボンのポケットから煙草を取り出すと、口に加えながら眉間にシワを寄せ、考える。 知らない土地。 辺りを漂う禍々しい障気。 そして、自身の事でありながら、以前の記憶が曖昧。 「………とりあえず、服屋でも探すか」 ライターで煙草に火を付け、建物の集合体目指して、蒼崎は歩き出した。 ――――――――――――
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