5人が本棚に入れています
本棚に追加
――肌を刺すようなヒンヤリとした寒気で、私は眼を醒ました。
ここは…観布子市…いや、冬木…か?
ボンヤリとした意識と視界。欠伸をしながら眼を擦り、再度辺りを見回す。
そこは野外。
しかも回りは草だらけ、自身が寝そべっていたのは黒みのある土の上…と言うか畑だ。大根の葉が列なっている。
「…ぁー、なんてトコで寝てんだ、私は」
気だるそうに立ち上がり、体に付いた土を払う。
そしてもう一度、自身が置かれた状況と、それ以前の記憶を思い返す。
まだ寝起きの頭がボーっとし、全然思い出す事が出来ない。
「……昨日、酒でも飲み過ぎたか」
適当な解釈で自己解決し、蒼崎は歩き出す。
とりあえず、寒い!
太陽は出ているのだが、それでも寒い。
吐く息が若干白く濁るところをみると、今は秋か冬なのだろうか?
だが、一番の理由は、こんな気温下で半袖Tシャツを着ている自分のせいである。
「…風邪でも引きそうだな」
自身を皮肉りながらも蒼崎は、ここが観布子市でも冬木市でもなく、「自分の知らない土地」だと言う事は理解した。
それと、寒気とは別にもう一つ…肌にちくちくと突き刺さる感覚に、蒼崎の表情が少し険しくなる。
「なんだろう?この辺りを一体を覆い尽くす禍々しい感覚は…それに、なんだか――」
懐かしい――。
蒼崎は、この憎悪や悪意類いの微かな障気の中に、懐かしさを感じ取れた。…実に不愉快だ。
「……まさか、な」
そう呟き、ズボンのポケットから煙草を取り出すと、口に加えながら眉間にシワを寄せ、考える。
知らない土地。
辺りを漂う禍々しい障気。
そして、自身の事でありながら、以前の記憶が曖昧。
「………とりあえず、服屋でも探すか」
ライターで煙草に火を付け、建物の集合体目指して、蒼崎は歩き出した。
――――――――――――
最初のコメントを投稿しよう!