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最近の冷え込みは一段と激しい。
スカートの下にジャージを履いていると言うのに、それでも冷え冷えとした空気が肌に突き刺さる。
「うぅ……寒っ!」
たまらず声に出し、ハァと白い息を吐いてみる。
街路樹からも大半の枯れ葉は落ち、気温も兼ねて季節が秋から冬へとシフトしているのは明白。
ボクが男なら、スカートとかこんなの気にしなくて済むのに。
そんな事を考えながら、志水瑠璃子は自身のアパートへと足を進める。
途中、気まぐれでいつも寄るコンビニとは別のコンビニへ足を運び晩御飯の食材を買って、再び帰路に着く。
そんな帰り道、瑠璃子はふと景色に違和感を感じた。
「あれ?ここ…いつ買い手がついたのかな?」
瑠璃子の記憶だと、ここは数日前までコンビニの跡地で、空き物件だった筈である。
しかし、まるで昔から存在していたかの様に、「伽藍の堂」と書かれた看板が、そこに存在している。
古本屋…骨董品屋さんかな?
それともパワーストーンみたいなアクセサリー屋さん?
――伽藍の堂。
気になりつつも、とりあえずアパートの自室へ歩を進める。
瑠璃子は帰宅するや否や、服を洗濯機へと脱ぎ捨て、シャワーの蛇口を捻る。
シャワーの水が暖かくなり、ようやく全身を暖める事が出来る。
そう思い、徐にシャワーを浴びようとした瞬間――。
―――…ッ!!
急に、瑠璃子の右肩に激痛が走る。
鏡で自身の右肩を見ると、そこには変なアザが出来ていた。
「…何、このアザ?いつ出来たんだろ?」
そのアザはしばらく熱と痛みを帯びていたが、その感覚は次第に消えていった。
瑠璃子は「アザにお湯が染みたのだろう」と思い、再びシャワーを浴びる。
颯爽と着替えると、瑠璃子は自転車で例の場所「伽藍の堂」へと向かう。
時刻はまだ16:00前、普通のお店なら全然空いてる時間帯だ。
少し緊張しつつも、瑠璃子は意を決してドアノブに手を掛ける。
…ガチャ、キィィ……
見た目と裏腹に、古臭い音を立てつつも、その扉は、向こうへと瑠璃子を誘う。
「……ごめんくださ~ぃ…」
震える様な声でそう言いながら、瑠璃子は部屋の中を見回す。
眼前に広がったのは、雑に置かれた本の山。
しかも分厚くて古臭そうな本ばかりだ。
やはり古本屋なのだろうか?
瑠璃子は好奇心に駆られ、さらに室内へと踏み出す。
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