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それは初夏に差し掛かる日のことだった。
前日呑みすぎて昼過ぎまで寝ていた俺は独特の電子音が携帯から流れているのが聞こえ、目を覚ました。
「…この音は着信だな………」
誰に言うでもなく、痛む頭を押さえながら、うるさく鳴り響く携帯に手を伸ばす。
手の平で鳴る携帯のディスプレイには《葉山ハヤマ ゆかり》と表示されていた。
頭の痛みが増した気がする。
電話を無視することも考えたが、ゆかりのことだ。
出るまで延々と俺の携帯を鳴らし続けるだろう。
仕方なしに俺はため息をつきながら、電話を耳にあてる。
「あっ!ようやく出た! あんたねぇ何回私が電話したと思ってるのよ!」
やはり…
俺の想像通り二日酔いの俺には大ダメージの声量が頭を突き抜けた。
「…悪かったよ、今二日酔いで頭痛いんだ。あんま金切り声出さないでくれよ。」
そう言って冷蔵庫から水を出し、口に含む。
冷たい水が身体に染み渡り一気に目が冴える。
「全くあんたさぁ、もう今年で卒業なんだからいつまでも学生気分で呑みすぎたなんて言ってんじゃないわよ。」
電話の向こうのゆかりは呆れた様子で説教をした。
「わかってるよ、んで何だよ?なんか用があるから電話かけてきたんだろ?」
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