さらわれて。

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薄目を開けて、周りの様子を伺う。なるべく寝ている状態の呼吸を意識して。 恐らく今、運転しているであろう人物に気付かれないように。 私は後部座席にうつ伏せで寝ている。 顔は運転席に向けているが、バックミラーには写らない位置。 もう少し目を開けても大丈夫そうだ。 向こうから私の顔が見えないように、私からも運転手の顔は見えない。 たまにおでこが写るくらい。 こちらを見られたらまずいと思って、薄目に戻したが、運転手は私を見ない。 ラジオがついているが、電波状態が悪いのか、ザザーと砂嵐の音しか鳴らない。 運転手は無言で、どこかに向かって運転し続けている。 ・・・男の人、みたいだ。
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