夜合樹

3/5
前へ
/37ページ
次へ
「また咲いたね。」 君が言った。そうだね、と言いながら、教科書をカバンから机に移す。 強く押しすぎたのか、教科書が机の奥にぶつかって鈍い音が響いた。 「あの花の名前、知らないんだ。いっつも見かけるんだけど。」 君とは家が近いから通学路も同じだ。たぶん、今朝見たあの花の事だろう。そう思いながら話を聞く。 「調べてみる?」 「え、いいよ。調べるほどじゃないし。」 好きだけど、そこまでじゃない。見ているだけで良いんだ。 君は不服そうに頬を膨らませた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加