第3話:フェリー殺人事件

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 北海道行きのフェリー。その客室の一つに、俺と洋子は居た。  何故こうなったのか、それは遡(さかのぼ)ること三日前。  黒沢探偵事務所に入ってくる洋子。 「いらっしゃい……って、洋子か。何の用?」 「聡、北海道行こう」 「何だよ、いきなり」 「旅行券が当たったのよ。だから一緒に行こうと思って」 「出発は?」 「三日後の朝よ」 「分かった」  と言うことがあり、今に至る。  フェリーはもうすぐで苫小牧に到着する。  俺と洋子は降りる準備をした。 「うわああああ!」  聞こえてくる悲鳴。隣の部屋からだった。 「洋子、行ってみようか?」 「嫌な予感でもするの?」 「少しだけね」  俺と洋子は隣の部屋の前に移動した。 「何が遭ったんですか?」  腰を抜かした男性が部屋の奥を指差した。 「あ……あれ……」  俺と洋子は部屋の奥を見た。そこには女性の刺殺体があった。  俺は遺体に近づき振れた。 「亡くなったばかりだな」  男性の下に戻る俺。 「被害者の名前、教えて頂けますか?」 「聡美(さとみ)。僕の妻です」 「貴方のお名前は?」 「九条 剛(くじょう つよし)です」 「では、九条さん、発見当時の状況を教えて頂けますか?」 「貴方、何なんですか? 警察でもないのに」  洋子が九条に警察手帳を見せる。 「警視庁捜査一課の荒川です。訊かれたことに答えて下さい」 「あ、本物の警察なんだ」 「九条さん、発見当時の状況を教えて下さい」 「僕が自販機でジュースを買って戻ってきた時でした。ドアを開けると、妻が血を流して倒れていたんです」  九条の足下には缶ジュースが転がっている。 「洋子、俺は現場を調べるから、お前は船員に接岸しても出入り口を開けないように頼んできてくれ」 「分かったわ」  洋子は駆け足で去っていった。 「九条さん、知り合いは乗ってませんか?」 「いえ、乗ってません」 「そうですか」  俺は現場を調べることにした。  被害者は腹部を刺され死亡。死亡推定時刻は午後一時前後。部屋に凶器は見当たらない。犯人が持ち去ったのだろう。 「聡、頼んできたわ」  と、戻ってきた洋子。 「道警に通報は?」 「それも済ませたわ」 「そうか」  俺は部屋を出た。 「九条さん、警察の捜査が終わるまで部屋には入らないで下さいね」 「分かりました」 「洋子、道警が来るまでに犯人見つけとこう」 「とか言いながら手柄を独り占めしたいだけなんじゃない?」
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