8人が本棚に入れています
本棚に追加
北海道苫小牧市の路上。
俺と洋子は車で函館に向かっていた。
「洋子、腹減らない?」
「そう言えば、お昼まだだったわね。何食べる?」
「あ、そこにラーメン屋がある」
俺たちはラーメン屋の駐車場に車を止めて中に入った。
「いらっしゃい! 何にしやす?」
「チャーシュー麺二つ」
「はいよ!」
俺と洋子は席に着く。
チャーシュー麺が出来上がり、席へ運ばれてきて、俺と洋子は食べ始めた。
その時、後ろの席で男性が苦しみだした。
「うっ……うう……!」
床に倒れる男性。
「どうした?」
男性の友人らしき男、香取 悠輔(かとり ゆうすけ)が男性を揺さぶる。
「お客様、どうなさいました?」
店員が心配そうに男性を見つめる。
俺は男性に歩み寄った。
男性の口元からアーモンド臭。男性は既に死亡していた。
「店員さん、百十番お願いします」
店員は店の奥へと入っていった。
それから暫くして、北海道警察苫小牧署の捜査員たちがやってきた。
「みなさん、遺体には振れてないでしょうな?」
俺が遺体に振れていた。
「ちょっと貴方、何してるんですか?」
俺は無言のまま遺体の所持品を引っ張り出し、その中の免許証を確認した。
「被害者の名は高柳 浩三(たかやなぎ こうぞう)、三十五歳。死因は毒物によるものだと思われます」
「あのね、君!」
俺は振り返り、目の前の刑事に返答した。
「何ですか?」
「何ですか? じゃない! 遺体に振れるなと言ってるんだ!」
洋子が刑事の肩を叩く。
「何!?」
振り返る刑事。
洋子は懐から警察手帳を出して刑事に見せた。
「警視庁の荒川と申します」
「これはこれは! 大変失礼致しました!」
刑事は敬礼の後、俺に向き直った。
「貴方も刑事なんですか?」
「いや、僕は探偵の黒沢 聡です」
「黒沢 聡って、あの有名な!?」
「ええ、そうです」
「会えて嬉しいです。実は私、ファンなんですよ」
「そんな事より、事件の捜査はいいんですか?」
「ああ、そうでした」
刑事は遺体を調べ始めた。
「毒殺か……」
刑事は香取に話を訊く。
「被害者とはどういう関係で?」
「お友達ですよ」
「お仕事は何をされてる方だったんですか?」
「ラーメン評論家ですよ。辛口評論で有名でしたよ。彼の評論で潰れた店もあるとか」
「成る程。となると、恨みを買ってる人物は多いでしょうね」
最初のコメントを投稿しよう!