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刑事は踵を返し、
「名取、害者の交友関係洗うぞ」
と、部下の刑事と共に去っていった。
俺は香取に話を聞く。
「あのー、さっき言ってた店を潰されたってやつなんだけど……」
「ああ、そこの店員さんの父親ですよ」
俺は店員に向く。
「そうなんですか?」
「ええ、そうです。だからって私は殺しちゃいませんよ?」
しかし容疑者は店員と香取の二名。殺せるのはこの二人しか居ない……。
「洋子、警察署行こう。何か進展があるかも」
「分かったわ」
俺は店員に代金を払い、洋子と共に店を出て車に乗り、警察署へと向かった。
苫小牧署の刑事課では、捜査会議が行われていた。
俺と洋子は捜査会議が終わると同時に中へ入った。
「すみません」
「はい、何でしょう?」
一人の刑事が返答する。
「警視庁の荒川です。高柳 浩三の件でお話を聞かせて頂けませんか?」
そう言って警察手帳を見せる洋子。
「ご苦労様です」
刑事は立ち上がり、ホワイトボードの前に移動した。俺と洋子もそれに続く。
ホワイトボードには被害者とその知人の写真が貼られていた。その中には当然、香取 悠輔の名もある。
「被害者の評論で店が潰れた方はどなたです?」
「この方です」
刑事が指で示したのは、佐山(さやま) 敬一郎(けいいちろう)だ。
苫小牧署の捜査員が佐山の所へ向かったところ、佐山は既に他界していたという。自殺らしい。
「佐山さんの自殺の動機は何です?」
「店を潰されたことですね」
「佐山さんにはお子さんって居るんですか?」
「事件の遭ったラーメン屋の店長です」
「名前は?」
「誠一(せいいち)です」
「たぶん佐山 誠一が犯人ね」
「洋子、何でそう思うの?」
「だって、店を潰され自殺って、十分殺害の動機になるじゃない」
「だからってそいつが犯人とは限らないだろ?」
「そう言う聡は誰が犯人だと思ってるの?」
「まだ分からない」
本当のところ、香取 悠輔を疑っている。
「香取には兄弟とか居るんですか?」
「姉が一人居ますね」
「姉の名は?」
「佐山 香奈子(さやま かなこ)、敬一郎の妻です」
これで繋がったな。
「洋子、犯人が判った」
「え、本当?」
「香取 悠輔の所へ行こう」
俺と洋子はラーメン屋へと戻った。
「あなた方は?」
刑事がそう訊ねると、洋子が警察手帳を出した。
「香取さんはどちらにいらっしゃいます?」
「香取さんなら帰られましたよ」
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