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本州。
北海道旅行が終わり、俺と洋子は東京に戻っていた。
黒沢探偵事務所のドアが開き、洋子が中へ入ってくる。
「洋子か。今日は何の用だ?」
「聡、難事件よ」
「難事件? どんな事件なんだ?」
「千代田区のマンションで起きた事件なんだけど、被害者は男性で背中にナイフが刺さってたの。発見当時、部屋の鍵は全て掛かっていて、鍵は遺体のポケットに入っていたわ」
「密室殺人か……。洋子、取り敢えず現場まで案内してくれ」
俺は洋子と共に事件のあったマンションへ行き、現場の部屋を調べた。
遺体はリビングで俯(うつぶ)せの状態で発見され、背中には先の通りナイフが刺さっていた。
俺は遺体が倒れていた場所を調べ、凹んでる箇所を見つけた。
「洋子、この凹みは何だろう?」
「どれ?」
洋子が床の凹みを見る。
「何かしらね」
「洋子、発見当時、妙なことはなかった?」
「そういえば……暖房がついてたわ。夏なのに何でかしら?」
成る程。
「洋子、これは自殺だよ」
「自殺?」
「そう。床にナイフのついた氷を置き、その上に仰向けでダイブして自分の背中にナイフを刺したんだ。これがその証拠だよ」
俺は不自然な位置に立っている椅子を示した。
「飛び込む時はこの椅子を使ったんだ。床の凹みは着地の衝撃で出来たもの。暖房がついていたのは、早く氷を溶かす為だと思う」
「成る程。じゃあこの事件は自殺で書類送検するわ」
俺と洋子は部屋を出た。
「じゃあ俺はこれで」
俺は洋子と別れ、帰路に就いた。
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