第6話:狙われた刑事(前編)

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 黒沢探偵事務所。  俺は椅子に座って新聞を読んでいた。  コンコン、とドアがノックされる。 「黒沢さん、警察です!」  俺は新聞を置き、ドアの前に移動して開けた。  二人組の男が警察手帳を見せる。 「練馬署の者です。貴方に殺人容疑で逮捕状が出てます」  そう言って逮捕状を見せてくる刑事。 「ちょっと待って! 何かの間違いでしょう!?」 「話なら署の方で聞きますよ」  俺は刑事に手錠をかけられ、署まで連行され、取調室に入れられてしまった。 「あの……殺人って一体何が遭ったんでしょう?」  刑事が机の上に遺体の写真を置く。 「知りませんよ。誰ですか、この人?」 「山田 徹(やまだ とおる)。お前が殺(や)った男だ」 「それで、どうして私が容疑者に?」 「死因は後頭部を鈍器で殴られたことによる脳挫傷(のうざしょう)。凶器は現場に落ちていた金属バット。そしてそのバットにはお前の指紋がついていたんだ」 「私の指紋はどこで入手したんですか?」 「お前、高校時代に傷害でパクられてるだろ? 前科者リストにあったぞ」  非常に不利な証拠だ。 「否認してもいいんですよね?」 「だからって状況が変わる訳ではないぞ。物証があるんだからな」  腹減った。 「それより、カツ丼出して下さい。取り調べと言ったらカツ丼でしょ?」 「出ねえよ!」 「つまんねえ。ところで俺は帰れないの」 「当たり前だろうが!」  そう言って刑事は俺を留置場へと連行した。 「裁判の日までここで暮らしてもらうからな」  そう言って去ろうとする刑事。 「待って下さい」 「何だ?」 「本庁捜査一課の荒川 洋子警部を呼んで頂けませんか?」 「分かった。手配しておこう」  刑事はそう言うと、今度こそ去っていった。  それから一時間が経ち、洋子が留置場にやってきた。 「聡、殺人って、あんた何やってんのよ?」 「違うんだ! 俺じゃないんだ! 頼む、ここから出してくれ!」 「じゃあ、パパのこと話す?」 「義兄(にい)さんには迷惑かけられないよ」  その時、先程の刑事が血相を変えてやってきた。 「黒沢さん、申し訳ありません!」  そう言って扉を開ける刑事。 「黒沢さんも人が悪い。警察庁刑事局長、荒川 和夫(あらかわ かずお)さんの義弟(おとうと)さんならそう言って下さればいいのに」
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