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黒沢探偵事務所。
俺は椅子に座って新聞を読んでいた。
コンコン、とドアがノックされる。
「黒沢さん、警察です!」
俺は新聞を置き、ドアの前に移動して開けた。
二人組の男が警察手帳を見せる。
「練馬署の者です。貴方に殺人容疑で逮捕状が出てます」
そう言って逮捕状を見せてくる刑事。
「ちょっと待って! 何かの間違いでしょう!?」
「話なら署の方で聞きますよ」
俺は刑事に手錠をかけられ、署まで連行され、取調室に入れられてしまった。
「あの……殺人って一体何が遭ったんでしょう?」
刑事が机の上に遺体の写真を置く。
「知りませんよ。誰ですか、この人?」
「山田 徹(やまだ とおる)。お前が殺(や)った男だ」
「それで、どうして私が容疑者に?」
「死因は後頭部を鈍器で殴られたことによる脳挫傷(のうざしょう)。凶器は現場に落ちていた金属バット。そしてそのバットにはお前の指紋がついていたんだ」
「私の指紋はどこで入手したんですか?」
「お前、高校時代に傷害でパクられてるだろ? 前科者リストにあったぞ」
非常に不利な証拠だ。
「否認してもいいんですよね?」
「だからって状況が変わる訳ではないぞ。物証があるんだからな」
腹減った。
「それより、カツ丼出して下さい。取り調べと言ったらカツ丼でしょ?」
「出ねえよ!」
「つまんねえ。ところで俺は帰れないの」
「当たり前だろうが!」
そう言って刑事は俺を留置場へと連行した。
「裁判の日までここで暮らしてもらうからな」
そう言って去ろうとする刑事。
「待って下さい」
「何だ?」
「本庁捜査一課の荒川 洋子警部を呼んで頂けませんか?」
「分かった。手配しておこう」
刑事はそう言うと、今度こそ去っていった。
それから一時間が経ち、洋子が留置場にやってきた。
「聡、殺人って、あんた何やってんのよ?」
「違うんだ! 俺じゃないんだ! 頼む、ここから出してくれ!」
「じゃあ、パパのこと話す?」
「義兄(にい)さんには迷惑かけられないよ」
その時、先程の刑事が血相を変えてやってきた。
「黒沢さん、申し訳ありません!」
そう言って扉を開ける刑事。
「黒沢さんも人が悪い。警察庁刑事局長、荒川 和夫(あらかわ かずお)さんの義弟(おとうと)さんならそう言って下さればいいのに」
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