第6話:狙われた刑事(前編)

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「言ったって信じないでしょう? で、出ていいの?」 「はい」 「じゃあ真犯人突き止めるか。洋子、行くぞ」 「うん」  俺と洋子は留置場を後にし、刑事課へと向かう。  刑事課に来ると、取り調べの刑事が声をかけてきた。 「黒沢さん、先程はご無礼を申し訳ありませんでした」 「そのことなら構いません。それはそうと、事件のことについて説明をお願いしたいのですが……」 「はい。え……害者は山田 徹、二十五歳。職業は刑事で、警視庁組織犯罪対策課の課長です」 「洋子、知ってる?」 「知らない」 「遺体の発見現場は?」 「練馬児童公園です」 「凶器についていた指紋は僕のだけですか?」 「そうですね。黒沢さん以外の指紋は検出されませんでした」 「洋子、本庁行くよ」  俺は洋子を連れて警視庁へ向かい、組織犯罪対策課へとお邪魔した。 「どんなご用件で?」  刑事が俺たちに訊ねる。 「山田課長の件でお話を伺いたいのですが……」 「あなた方は?」  その問いに洋子が警察手帳を見せる。 「捜一の荒川です」 「黒沢です」 「ああ、ご苦労様です。しかし、犯人は先程逮捕されたと聞きましたが?」 「その件、実は誤認逮捕だったんですよ」 「誤認逮捕!?」  本当は上からの圧力だが、黙っておく。 「で、真犯人は誰なんです?」 「それを今、調べてるところです」 「そうですか。で、何を話せばいいでしょう?」 「そうですね……山田課長の警察以外の交友関係でも聞きましょうか」 「そう言われましても、当方では把握出来ていないので何とも……」 「そうですか。失礼します」  俺と洋子は警視庁を出て、練馬署の刑事課へ戻った。 「ああ、黒沢さん」 「山田課長の携帯電話を見せて頂けませんか?」 「それでしたら、鑑識にあるのでそちらへ行かれてはどうでしょう?」 「洋子、行こう」  俺と洋子は鑑識に向かった。 「すいません、死亡した山田 徹の携帯はありますか?」  鑑識の職員が携帯電話を持ってくる。 「こちらが山田 徹の携帯になります」  俺は携帯を手に取り、着信履歴を開いた。  見覚えのある電話番号が記録されていた。俺が自分の携帯でその番号にかけると、ディスプレイに川島 実(かわしま みのる)と表示された。 『はい、川島です』 「黒沢です」 『黒沢って、黒沢 聡か?』
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