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「さて、どうしようか?」
「昨日の夜、喧嘩してたっていう男女を捜そうよ」
「見つかるかな?」
「それを言っちゃおしまいよ」
「よし、じゃあ捜そう」
その時、洋子の携帯電話が鳴った。
「荒川です」
応答する洋子。
「……それ本当? ……分かったわ。行ってくる」
電話を切る洋子。
「どうした?」
「昨夜、喧嘩してた男女の男の方が見つかったって。名前は小宮山(こみやま) 博司(ひろし)。今から行くわ」
洋子は車を発進させた。
千代田の住宅街に小宮山の家はあった。
洋子がインターホンを鳴らす。
小宮山と思しき男が出て来て訊く。
「どちら様?」
洋子が小宮山に警察手帳を見せると、小宮山は慌てた様子でドアを閉めようとしたが、俺がドアに足を挟んで全開した。
「小宮山さん、何かやったんですか?」
「すみません、万引きやりました」
「そう。それより、笹本 秋子さんをご存知でしょうか?」
「え、万引きの捜査じゃないの?」
「違います。今は殺人事件の捜査をしています」
「殺人!? 僕は関係ないですよ!」
「小宮山さん、貴方、昨日の夜、女性と喧嘩されてますよね?」
「喧嘩はしてないですよ。別れ話をしてただけです」
「相手は笹本 秋子さんですか?」
「誰ですか、それ?」
俺と洋子は顔を見合わせる。
「シロ?」
「だろうね」
俺は小宮山の方を向く。
「お時間取らせてしまってすみませんでした。万引きについては後日、警察の事情聴取があるでしょう。では」
俺と洋子は踵を返し、小宮山の家を後にした。
笹本家。
インターホンを鳴らすと、中から四、五十代の女性が出て来た。きっと、笹本 秋子の母だろう。
「警視庁の荒川と申します」
と、洋子が警察手帳を見せる。
「秋子さんの件でちょっとだけお話を聞かせて頂けますか?」
「どうぞ、お上がり下さい」
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