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「き、貴様!私をどうするつもりだ!」
もはや演技の必要もない。あどけないソプラノに不釣り合いな罵倒の言葉を投げつけた。が、男は顔色一つ変えもしない。
「おいこら悪魔」
「私は吸血鬼だ!!!高貴なる私に向かって何と言う言い草!」
「ナルシスト悪魔、お前なにしてんの」
「貴様に捕縛されているところだが!?」
「頭悪ィな、そうじゃねぇよ。下界に何の用だっつってんの」
「貴様に関係ないだろう」
「"神よ、万物の天秤よ!今ここに―」
「わ、わかった!!話せばいいんだろう!!普通に食事に来ただけだ!!!」
「人間を襲うつもりか、この下等生物め」
「貴様、吸血鬼の始祖たる私に――ッ!!」
「なんだ、お前結構偉いのか」
「え、偉いもなにも、私は代わりが効かぬ存在であるわけなのだから、貴様のような――」
「じゃあ殺すのやめてパシ…じゃなかった、僕にしてやるよ」
「…パシりより悪化してないか」
「神はそのような言葉をお嫌いになられるんだよ、ばーか」
「こいつ天使の癖に馬鹿とか言ったぞ!!!神とやらはそれでいいのか!?」
「命を救われたことを感謝しやがれ、ナルシスト悪魔」
「だから私は吸血鬼だと言っておろうが!!!」
こうして吸血鬼の始祖である私と、天使より悪魔に近い男は出会ったのであった。正しく表現すると、――天使に捕獲されました。
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