第二章:自己紹介をしてみます。

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食事は生きるためだけでなく、時に楽しみとして行う行為でもあると思う。目の前にそびえるストロベリーチョコレートパフェを、スプーンで贅沢にすくって口へ運ぶ。チョコレートの甘さと苺の酸味が程よく混じり合い、ようするにとても美味しかった。 「ガキの癖によく食うな」 「これは仮の姿だと言って…いや、まあ、単に人間の食事は体に吸収されぬから、いくらでも食えるのだ」 「不便なんだか便利なんだか」 欠伸混じりでグレープフルーツソーダを飲む男は、言わずもがな私を捕獲した天使である。 別に甘い物を食わせてやるとか言われて、ホイホイ付いて行った訳ではない。家族向けのため入りづらかった、ファミレスの特大パフェに釣られた訳でもない。ストロベリーフェアという名のなんだか可愛くて美味しそうな単語に陥落した訳でもない。 そう、この腐れ天使の相手をして弄んでやろうという、至極真っ当な理由でやって来たのだ。 「旨いか」 「あぁ!苺は美味いな!」 「…素直だな」 「次は"ストロベリーチーズケーキ"が食べたい」 「それ食ってからな」 「…貴様、そういえば何の用だ?私を餌付けするつもりか」 「餌付けされた奴が何を今更」 「されておらん!!」 「パフェ、旨いか」 「腹がふくれんのが惜しいほど美味い!」 「…そりゃよかったなぁ」 とりあえず目の前の天使の用件より、パフェが重要だ。幼い少女が特大パフェを平らげる姿に、店員や客の奇異な視線を浴びつつも美味しくいただいた。こんなに美味い苺は初めて食べた、人間の食事とやらもなかなか良いものだな。
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