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――ま、……やさま、松山様。
呼び掛ける声に、南龍はようやく気付いて振り返る。黒い外套(がいとう)を纏って首に赤い布を結んだ子供が降りしきる雪の合間に、ふわりとした笑顔を浮かべて、積もった雪の上に座る南龍の元へ歩いてくる。
「やっぱり松山様だ」
弾む息は急いで来た証か。中性的な顔立ちをした子供は男女の見分けがつかぬ。守鶴くんが探していましたよ、と一生懸命に歩む子供。
その懸命さに思わず笑みが浮かぶ。
「眞守巳殿。よう解ったな」
辺りは真っ白に雪化粧し、未だに降る雪は白い行者姿の南龍の姿を完全に溶かしていた。加えて白髪頭の色白肌とあっては、一目でそこに人がいるとは判別つきづらい。
それなのに見つかってしまい、南龍は己を見つけた眞守巳を感心した。
眞守巳はそんな南龍を凝(じっ)と見詰めている。
「……どうした?」
居心地が悪くなり、南龍は困ったように眞守巳に笑いかける。
澄んだ子供の目は要らぬものまで見抜いてしまいそうで少し、怖い。
眞守巳は南龍を見下ろしたまま、「松山様」と言う。
「うん?」
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