第零章 人類史上最悪の科学者

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静かな夜。 三日月が照らすその町は高層ビルが立ち並び、夜でも星を隠すほどの光を放つその都市は―――東京。 そのビルの中でも一際高いマンション、その最上階には今、時の人である男が住んでいる。 しかし―――突如静寂の夜に轟音が響き渡る。 「クソッ…これも失敗か…。配合を一から見直そう…」 ひ弱。 彼を指す言葉に一番先に出てくる単語がそれだ。 しかし、彼もまた整った顔立ちをしており、一度外に出れば女子から感嘆のため息が出ることは必須であろう。 しかし、彼が外に出たところでそんな事にはならない。 彼の本性は度し難い変態であり、今世紀最大のマッドサエンティストと言う称号をつい昨日、人類史上最悪の科学者に昇格させたばかりなのだ。 彼の専攻は―――理科。 総合的な全てを専攻し、全てを知り尽くさんと意気込む彼の名は―――。 更科漸(サラシナ ゼン)。 人類を飛躍的に進歩させた発明を半年と経たずに世に送り出した張本人である。 しかし―――彼の実験は常軌を逸している。 そう、先ほどの爆発もそのうちの一つ。 有り得ない過程をへて、彼の発明は完成する。 例えば立体映像投射機。 なぜかフラスコを使って銀とニッケルを混ぜ、未知の物質を混ぜ込みフラスコごと溶解させる液体を作り出しから、その三日後には立体映像投射機の基盤を作り上げていた。 例えば完全な人格を持つAI。 なぜか望遠鏡を取り出し「俺はウルトラの星を見つける!!」と豪語してから実際に未知の星を見つけ、その次の日には簡単な受け答えができるAIを完成させ、一ヵ月後には完全な人格を持ったAIを作り出した。 そして、『五月蝿いから』と言う理由で地球と無理心中出来る爆弾を作ったのだ。 「ふぅ…何か良いインスピレーションは無いだろうか?」 ぼそりと呟き、空を見上げる。 因みに、背後にはその爆弾の入ったアタッシュケースが無造作に置かれてたり。 色合いは、物騒な物が入っている割には何だか旅行に行く時のような明るいデザインのされたアタッシュケースだった。
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