5ー私は『』、生粋の紅

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だからこそ、私は悩んだ。 懊悩した。 それでも自分は、既にこの世界に存在が膠着してしまっている。 不釣り合い窮まりなく、 なんの面白みも、悦楽もない、ただ周囲と違う性質を持っているだけで迫害を受けるような、くだらない世界に―――― 私はそれでも、生きなければならない。 生きなければならなかった。 だから、このまま表面に近い場所で今この瞬間だけでも平穏に生きていられるよう、飽くまで私は『自己防衛』という形であらゆる努力をした。 努力を。 尽力を。 妥協を。 時には、本意ではない道化を演じ 周囲に同化をした。 いや、 同化というよりかは、擬態といった方がいいだろうか… 見破られないことを最前に考えて行ったのはカモフラージュだった。 そしてやっと、 やっと…ようやっと人並みの足場が得られた。 喩え仮初でも、やっと繋がりが得られたことを…私は密かに喜んでいた。 けれど… そんな安楽を、私の『ムイシキ』が見逃す筈もなかった。 『なるようにしかならない最悪』の私を、いつかある誰かがこう言った。  
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