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晴れた冬の終わりの朝。
誰にも告げず、僕は旅立つ。
もう長くない僕は頻繁に苦しんで、必ず貴方の負担になるから。
君が醒めないうちに、消えようと思う。
迷惑を、かけてばかりでごめんね。
本当にごめん。
僕が発作を起こして苦しむ度、揺れる貴方の瞳は怯えていて。
いつも心が苦しかった。
『大丈夫だよ』と云ってくれる度に泣きそうに歪む貴方を、
もう見ていたくはないよ。
その度に憔悴する貴方は痛々しくて…
笑ってほしいのに、そうさせることができない愚かさを再認するんだ。
君は僕に、どれだけのものを与えてくれただろう。
僕は残された時間の中で、どれだけ君に恩を返せるだろう。
だから、僕は決めた。
貴方を開放するよ。
貴方は、僕みたいに薄暗い世界でしか生きられない男といるよりも
もっと明るい場所で、たくさんの仲間に囲まれて笑っているべきなんだ。
たとえ隣に、僕がいなくても
貴方は笑っているべき。
だから…どうか、目覚めた時には僕を忘れていておくれ。
身勝手な僕を許してとは言わないから、
だから…代わりに忘れていて。
これが最期の我儘だよ。
人を殺めるだけの、ただの道具だった僕を、一人の人間として見てくれた。
なに1つ恐れることなく、愛情をもって接してくれた。
笑顔を向けてくれた。
名前を呼んでくれた。
拒絶ばかりしてたこんな僕に、めげずに手を伸ばしてくれた。
君には、どんなに感謝しても足りないくらいだよ。
さようなら。
さようなら、愛し君。
春を待てずに行く僕を置いて、君は迷わずに進むんだよ?
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