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この訳の分からない不気味さから早く解放されたいのだろう、と自分で解釈する。
人の姿を追い求めるようにして、辿り着いたのはキッチンだった。
普段は殆ど足を踏み入れない其処に、
ひたひたと冷たいタイルの感触を感じながら突き進んだ。
物音一つしないばかりか、朝食の匂いすら何も感じ取れない。
厨房をぐるりと見渡すも、
目に入るのは整頓された食器棚や調味料だけだった。
やはり人の姿はない。
身を翻すと、先程よりも速度を増した歩調で、ある部屋に辿り着く。
他の部屋よりも少し華美につくられた戸に、嫌な予感を覚えながらもノックする。
またしても返答がない。
どうか予感が的中しないことを祈りながら、
剣呑な目つきで扉を強引に引き開ける。
淡いピンクに彩られたその部屋のベッドには、予感通り人影はなかった。
「…母上……?」
部屋の主を探すように、部屋に足を踏み入れようとする主の肩を、
後ろから誰かが掴んだ。
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