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まさかアイリスと同い年ということはないだろうが、
二十代前半から四十代まで、幅広く通用しそうな摩訶不思議な道化師である。
只、幼かった時の記憶にあるのは、
背が高くて笑顔が素敵な、兄のような存在だったという事だけである。
その記憶だけで十分だし、アイリスはそれ以上エマニュエルに詮索したことはない。
知ったからといって、どうということもない。
ただそれだけの事である。
「なあ、エマニュエル」
「んん?どうしたんだぁい?」
派手な色合いのピエロ服を着たエマニュエルが、おどけたように首を傾げる。
語尾を伸ばす癖は、出会った時に既に身についていたように思う。
「僕ももう十八になったし―卒業に必要な単位は習得した。
そこでだが、旅に、…出ようと思う」
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