第一章 空虚の楽園

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まさかアイリスと同い年ということはないだろうが、 二十代前半から四十代まで、幅広く通用しそうな摩訶不思議な道化師である。 只、幼かった時の記憶にあるのは、 背が高くて笑顔が素敵な、兄のような存在だったという事だけである。 その記憶だけで十分だし、アイリスはそれ以上エマニュエルに詮索したことはない。 知ったからといって、どうということもない。 ただそれだけの事である。 「なあ、エマニュエル」 「んん?どうしたんだぁい?」 派手な色合いのピエロ服を着たエマニュエルが、おどけたように首を傾げる。 語尾を伸ばす癖は、出会った時に既に身についていたように思う。 「僕ももう十八になったし―卒業に必要な単位は習得した。 そこでだが、旅に、…出ようと思う」
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