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「なんだ、ノロケと文句なら聞かんぞ」
「ノロケないわよ。仕方ないから、梓ちゃんの方をいじろうかと」
電話口であたしをどういじるの言うのだ。
それに、彩未は修平に惚れている上でなかがいいのだから、指して問題がないと思うけど。
「浩平についてのことをからかうなら無駄だぜ。あたしはさっき浩平をふったんだ」
途端に電話先で悲鳴のような声が上がる。
いくらなんでも驚きすぎのような気もするが。
それに、ふったとはいっても関係そのものは変わらないし、単純にあいつの行動原理を行動で理解させられただけだ。
………もうあんなのはごめん被りたいが。
「えー!?え!?ちょっと、なんでなんでなんで?!あんなに仲良かったのに!?」
落ち着けよ。
さすがのあたしでもすこしばかり気落ちしてくるぞ、その反応は。
「仲が良いから付き合うってのはおかしいだろ。相手方がLOVEだとしても、こっちがLIKEなら成就するわけないだろうが」
「えー…」
あからさまな落胆の声が聞こえてきた。
どうやらあたしたちの関係を好奇の視線で見ていたようで、期待はずれだったらしい。
残念だったな、ざまあみろ。
「とはいえ、手土産にファーストキスは持ってかれたけどな」
とはいえど、あたしはファーストキスなんかに価値があるとは思っていない。
ああいうのは相手をものにしたあとにやるから達成感があるから大事なのだろうし、浩平みたいに同意もなにもあったもんじゃないファーストキスは、果たしてカウントしていいものか。
「…………浩平くん、大胆だね」
「ああ、本当にな。まったく、ある意味で進藤がかわいそうになってきたぜ」
進藤にとって、あたしは恋敵。
いくらあたしにその気がないとしても、この事を知って平静を保てるほど、思春期の女の精神力は強くはない。
いくら大人びていて、落ち着きのある進藤でも、泣くかどうかするだろう。
まあ、浩平について、あれだけ怒れるのだから当然か。
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