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「あー、そういえば進藤さん、浩平くんのこと好きみたいだからね」
「みたいじゃなくて、惚れてんだとさ。まあ、好きにしたらいいさ。あたしはもう浩平の色恋には関わらない。進藤みたいに美人なら、案外、浩平もころっといくんじゃねえの?」
「うーん、私はあの二人じゃ合わないと思うんだけどな。たしか進藤さんって良いとこのお嬢様だし、両親とも仲が良いから」
ああ、なるほど。
たしかに、そんな充実した環境のもとにいてぬくぬくとしてるんだったら、浩平と付き合うどころか、距離が開く一方だな。
真剣に好きでいても、浩平には両親と言う存在はトラウマそのもの。
似たような人間、家庭環境に不和を抱える人間でなければ、あいつを理解するのは難しい話だろう。
「けどまあ、家庭環境なんざ無視してなら、最高にいいカップルになれそうなもんだがな」
なんだろうか。
普段はこういう話をしてたら、苛立ってしまうものを、それが全くないなんて。
「そうだね。もしふったことが噂になったら、浩平くんはモテるし、多分、告白ラッシュなんじゃないかな。先輩からも人気あるし」
「勝手にさせとけよ。ともあれ、面倒がないのが一番だ。……ま、お前は修平と仲良くな」
「またそういうことを…。いとこ同士って結構気難しいんだからね」
知るか。
異性のいとこなんざいないんだから、気にする必要なんかない。
強いて気難しいとすれば、真弓の性癖だろうが。
あれだこれだと要ったところで、あれは真弓の個性なのだから、否定はしないけど。
それからまたとりとめのない話をして、怠いのでシャワーで入浴を済ませてから薬を服用して、さっさとベッドに潜り込んだ。
今日はやたらと疲れてしまったけど、まあ、この際はどうでもいい。
あたしはまぶたを閉じて、夢の中へと旅立った。
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