夏休み

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このスカートのほかにも、数着程度の服を買った。 そこそこの値段だったのだけと、普段は服さえ買わないのだし、たまにはいいのかもしれない。 折角だから、今度母親にでも見せてやるとしよう。 あんな言葉さえなければ、あたしと母親は仲のいい、普通の親子だったのだから。 ちなみに父親とは普通に連絡を取りあっていたりするので、単純にあたしの確執の問題だ。 歩み寄っても、許すことはしない。 あの頃に戻れないだけのダメージを、あたしは受けたのだから。 あたしは真弓が散らかしていたお菓子のごみを片付けると、飲み物だのお菓子だのをおいたりするための簡易テーブルを押し入れから引っ張り出すと、ベッドの脇に設置した。 その作業を終えたと同時に来客を告げるチャイムがならされた。 廊下の方からはパタパタとスリッパで駆ける音が響く。 どうやら叔母さんが応対に出てくれたようだ。 「こんにちわー!今日はよろしくねー」 と、彩未は元気だった。 まあ、こいつが元気なのはいいことだ。 変に気落ちされていたら、悪いことが起こる前触れかもしれないし。 「梓、こんにちわ。真弓さんも」 と、彩未よりは控えめな麻奈。 メンバーの中でムードメーカーである彩未に対してこいつは暴走しがちな彩未のストッパー的な役割。 「あ、小鳥遊さん、スカート、お似合いですよ」 「ここで名字はややこしいから、名前で呼べ。あたしも名前で呼ぶからさ」 可憐はあたしが見立ててもらったスカートを見留め、嬉しそうに笑っていた。 こいつは性格的に浩平と似たところがあり、なつけばしつこいくらいに絡み、やや強引なまでに引っ張り回す。 そして、そこが嫌みったらしくないものだから、不快ですらない。 「まあいいや。とりあえず荷物は押し入れの中に入れとけよ。今飲み物持ってくるから」 「あー、待った。飲み物なら私が持ってきたから」 と、麻奈は着替えだとかが入った大きな鞄からコンビニの袋を取りだした。 中には果汁系の飲料に炭酸飲料、そしてお茶が。 それぞれが大きいペットボトルだった。 果汁系と炭酸はそれぞれが1.5リットルで、お茶は2リットル。
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